2017年12月6日水曜日

Chateau Montana Banyuls dels Aspres

Chateau Montana
シャトーモンタナ試飲後記

先日11月25日に行いましたシャトーモンタナの試飲会。当日は当主の娘、セリーヌさんと現地と日本をビデオチャットで繋いでのワイン説明もありご参加いただいた皆様と楽しい時間を過ごすことができました。当日ご参加いただいた皆様からも味わいに関して様々なご意見を聞かせていただきとても参考になりました。皆様のご意見は後日セリーヌさんにもお伝えしておきました。

当日お越しいただいた皆様へはご試飲いただいたワインの補足として。都合がつかずお越しになれなかった皆様へは参考にしていただけるように私自身の試飲会後記を書かせていただきます。


<シャトーモンタナのご紹介>
シャトーモンタナはスペイン国境までわずか15キロの場所に位置するバニュルス・デル・アスプレ(Banyuls dels Aspres)にあります。ワインのエリアとしてはルーション地方になります。その中でも南よりになりスペインに近い場所です。

澄み切った碧い空の中に雄大なピレネー山脈を見渡せる壮観な土地。年間晴天日が300日を誇る太陽に愛される土地です。昼間の豊かな太陽の恵みを受け、他の産地より完熟が進みますが山岳地を背後に持っている関係で夜間の冷え込みがあります。そのため昼夜の寒暖差が生まれバランスの良い葡萄が収穫できます。

シャトーモンタナは現在、当主のパトリック・ソーレルさんと娘のセリーヌさんが中心に家族経営を行っています。19世紀からあった古いドメーヌを1996年に買い取り完全に修復しました。土地のスタイルを継承しつつもモダンでオリジナリティーのあるワインを生産しています。

主要品種はグルナッシュ、シラー、ムールヴェドル、カリニャン、ミュスカなど地葡萄とカベルネやメルローなどボルドー系の品種も作付けしています。パトリックさんは伝統を重んじるところもありながらアーティストのような側面を持ち独自のアプローチでワインを作っている印象です。


モンタナのワインは総じてスタイリッシュでバランス感に優れた印象を持ちます。やもすると野暮ったくなってしまうこの地のワインですが、味わいや香りの特徴を引き出しつつ見事に全体のバランスが保たれています。例えるなら「あんばい」の見事さとでも言えるでしょうか。これは完全にセンスの問題だと思います。出過ぎず引き過ぎず、言葉で言うと簡単ですが…見事です!




<ワインのご紹介&私の感想> ※当日試飲した順番で書かせていただきます。

1)I.G.P Cotes Catalanes Le Temps du Rose 2016 (ル・タン・デュ・ロゼ)


葡萄品種:シラー、グルナッシュ

南には欠かせないロゼワイン。タップリと熟したシラー、グルナッシュの黒葡萄からセニエ方式で作られるやや濃い目の色合いのロゼです。熟した葡萄から作られていることが香りから想像できるほどコルクを開けた時点で華やかで豊かな香りが一杯に広がります。いちごやフランボワーズ系の風味なのですがマンゴーやメロンなどの熟した果実が放つ厚みのある香りがついてきます。
アセロラ、ミント、クランベリーなどやや酸味を感じる風味もありとてもそそられます。

最初の一口から感じられる完熟感と豊かなボディー「旨味」と「濃さ」がしっかりと感じられます。香りから想像した通り厚みのある味わいながら飲み込んだ後に残る爽やかなミント風味とほのかに残る酸味が味わいの輪郭をしっかりと主張してきます。この厚みある味わいと酸味、爽やかさのバランスが見事に備わっていて飲み飽きません。飲み込んだ後数十秒は口の中に風味、味わいともにしっかりと残ります。果汁が充実している証拠ですね。

やや冷やし目にして食前酒としてもいいと思われます。しっかりしたボディーもコシありますからお料理と一緒に楽しむこともできます。例えばマヨネーズ系のドレッシングをかけたサラダにクレープフルーツやオレンジを添え上に胡桃やアーモンドを加えるとより一層の相性が出てくるように思います。肉類でも鶏や豚であれば問題なく合わせられます。チーズであればシェーブル系のやや酸味のあるものやペコリーノと生ハムを合わせたりすれば一層ワインが進みそうです。


2)Cotes du Roussillon L’astre Blanc 2015 (アストル・ブラン)
葡萄品種:グルナッシュ・ブラン、グルナッシュ・グリ



このワインも南仏を代表する葡萄品種でありこの地の気候によく合うグルナッシュ・ブランとグルナッシュ・グリで作られます。この品種は白葡萄品種の中では糖度が高くワインにした時にアルコールも上がるため、しっかりした厚みとコクが出ます。また最も熟成に向く品種でもあります。このワインは蔵の中でも葡萄の樹齢が古い実が使われます。そのためエキス分がしっかりと詰まった果汁が得られます。低温でじっくりと発酵、醸造しフレンチオークの新樽で熟成させます。1日一回樽に櫂を入れオリと果汁を混ぜ合わせ深い旨味を引き出していきます。

メロン、スイカなど瓜科の香り、イーストの香りもあります。香りは涼やかでシャープな印象を受けますが時間の経過ともに甘みを感じる蜜のような香りが出てきます。今はまだ熟成途上のためセージやタラゴンなどのハーブの香りも香ってきます。

最初の一口目はリッチさも感じますがまだ若さを感じる印象です。熟してくるともう少しトロリとした粘性を感じ、舌にまとわりつく感じになるのですがまだそこまでは熟していません。現段階では青リンゴのような穏やかでフレッシュな酸味が主役の役割をしていて総体的に爽やかな印象です。色合いもやや緑ががっていて透明感のあるクリーンな印象です。もちろん今飲んでも美味しいのですが熟れてきたら別世界を垣間見せてくれるのもこの品種ならではです。楽しみです。

地元では海老、蟹などと相性が良いとされていますが私感では寒鱈、アイナメ、キンキなどふわりとした白身の魚が最も合うと思います。それらを蒸し焼きにしてオリーブオイル、ワインビネガードライトマト、パセリ、蜂蜜、塩・胡椒で作ったドレッシングをかけて合わせると良いかと…
チーズであればウォッシュタイプのチーズに蜂蜜をかけてドライフルーツと共に


3)Cotes du Roussillon Le Rouge Eternel 2015 (ル・ルージュ・エタルネル)
葡萄品種:シラー、グルナッシュ、カリニャン

ガリーグの香りをまとった南仏らしい一本。このエリアでは大事にされている葡萄品種カリニャンを使います。もとはアラゴン(現在で言うとスペイン、カタロニア州)原産の品種です。フランス南部、地中海沿岸全域に持ち込まれ広まった品種です。農学的にも気候的にも地中海性気候にマッチしたため広く栽培されてきました。しかしカリニャンは豊産型の品種のため良質なワインを作るためには厳しい剪定を行い収穫量を絞らないと品質が上がりません。

このカリニャンで高品質なワインを作っている蔵元では皆「高樹齢」「低収穫量」が必須の条件としてあげています。そうした条件下で作られたワインはハーブやスパイスの香りを持ち、穏やかな酸味、柔らかいタンニンとシルキーな舌触りがあり、その独自性の高さから癖になる味わいとなります。

このワインにも例に漏れず豊なアロマ(ブラックベリー、ブラックチェリー、プルーンなど)が感じられ鼻腔をくすぐります。天草、ドライイチジクの風味も感じられます。抜栓後の時間の経過とともにより豊に大きく香りが増しイチジクジャムのような甘やかな風味も出てきます。柔らかく滑らかなタンニンが飲み口をスムーズにしてくれて飲みやすい印象です。熟成するとさらに滑らかさが増し甘み感を増した香りが歓喜を与えてくれるほど味覚を捉えてきます。

お料理ならこの香に寄り添うものがオススメです。南仏名物のタプナードやハーブで一晩マリネした羊肉のグリエにバジルのソースと生のイチジクを添えた一品。チーズであれば地元のペラルドンやロックフォールに黒胡椒と蜂蜜をかけたものなどが相性がよろしいかと思われます。


4)I.G.P Cotes Catalanes La Soif des Hommes 2015 (ラ・ソワフ・デ・ゾム)
葡萄品種:メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン

世界中で栽培されるボルドー系の品種、メルローとカベルネ・ソーヴィニヨンで作られます。そんな品種でも「年間晴天日300日の土地で作るとこうなるのか」と思わせる一本です。この品種の一大産地はボルドー地方でカベルネ・ソーヴィニヨンはその代表格です。しかし同じ葡萄品種を使っても気候帯が違う場所で育つと出来上がるワインの味わいも大きく違ってきます。

ボルドー地方は大西洋の影響を受け比較的湿度の高い海洋性気候で秋が長く穏やか。一方ラングドック・ルーション地方は非常に乾燥していて天候が年間を通じ安定している温暖な地中海性気候のため果物がより熟する傾向にあります。また乾燥しているため葡萄の病気にかかるリスクがほとんどなく十分な熟成を待って収穫できます。カベルネは皮が厚く晩熟型の品種であるため十分に熟するのを待って収穫されます。またワインになった後も強烈なタンニンからくる渋み成分があり瓶詰後もしっかりと熟成させてからでないと本来の味わいが堪能できません。

今までラングドック・ルーション地方のカベルネを使ったワインを何度も飲んできましたがどれも熟していて角の取れた柔らかなタンニンで渋みを感じず飲め、さらに渋みがコクになって豊かなボディーを作り出しているといった印象です。

このワインも深い色合いにも表れているしっかりとしたタンニンはありながら柔らかな飲み口と充実した果実味がありよく熟した印象が残ります。スミレやカシスの香り、キノコ類の香りもあります。アニス、丁子のニュアンスが加わってきます。そのままワインだけでも飲めますが豊富なタンニン分を中和してくれる動物性の油脂分が欲しくなります。サーロインステーキ牛脂分や牛スジの煮込みなどのゼラチン質も欲しくなります。キノコ類をバター、牛脂でソテーし塩、黒胡椒、バルサミコ酢で和えた一皿など。チーズであれば油脂分の強いブリヤ・サバランやブリー・ド・モーなどにアニスかシナモンのパウダーを添えると相性がよろしいかと思われます。


5)I.G.P Cotes Catalanes La Fontaine des Demoiselles 2015 (ラ・フォンテーヌ・デ・デモワーゼル)
葡萄品種:カベルネ・ソーヴィニヨン

カベルネ・ソーヴィニヨン100%で仕込んだワイン。(ラ・ソワフ・デ・ゾム)同様、完熟感があり充実した味わい。ただこちらのワインはカベルネ・ソーヴィニヨンだけなのでよりストレートにそれを感じることができます。私が過去に飲んできたカベルネの中でおそらく一番強烈で圧巻な香りがあります。かなり煮込んだソースのような凝縮した味わいと共に香りの「濃さ」が強烈に残ります。この味わいはこの気候ならではなのでしょうね。

モンタナの畑は幾つかの区画がありそれぞれの土壌特性に合わせて様々な品種を作付けしています。このカベルネは比較的穏やかな斜面の石灰粘土質の土壌に植えられていますが(写真)見てわかるようにものすごく乾燥している畑です。そのため葡萄の根は水分を求め地中深く根を張ります。つる科の植物は乾燥に強いのですがこの状況で葡萄の樹は飢餓状態に追い込まれることによって、植物が本来持っている力を最大限に出してきます。そのため通常よりも多くの養分、エキスを持つことになるそうです。

この圧倒的な香りと充実した味わいの元は他の産地より養分、エキス分が多い事が要因だと感じます。カシスジャム、コーヒー、アニス、ナツメグの香りもあります。香りが開いていくとバニラや燻製の香りもしてきます。インクのような深い黒系の色合いがリッチなタンニンを感じさせます。アルコールの粘性はそれほどありませんがタンニンとエキス分の濃さがダイレクトに舌を捉えます。飲んだ後に残る甘み感が充実した果汁を想像させます。長い余韻があります。牛や鶏の赤ワイン煮込みなど合わせるとよろしいかと。その際はナツメグやアニス、丁子などスパイスを効かせるとより一層寄り添うとおもいます。チーズであればコンテやパルミジャーノなど熟成して「旨味」があるものにパルサミコと蜂蜜で作ったソースをかけると相性がよろしいかとおもいます。


6)Cotes du Roussillon Silencio 2015 (シレンシオ)
葡萄品種:シラー、グルナッシュ、カリニャン

モンタナのトップキュヴェ、シレンシオ(スペイン語で沈黙の意)パトリックさんが考える最高のスタイルを形にしたワインだそうで「完璧なワインは沈黙して飲む」ということから名付けられたそうです。言葉はいらないってことですかね?そんな意味を知ってまで説明すると怒られそうですが私の仕事なので解説させていただきます。

やはりこのトップキュヴェはモンタナを代表するワインとしてフランス国内のみならず様々な国、場所で高い評価を得ています。そんな蔵を代表するワインはやはりカリニャンで作ります。これぞ王道です。所有する畑の中で特に高樹齢のわずかなカリニャンにシラーとグルナッシュを加えます。味わいの骨格をシラーとグルナッシュが作りそこにカリニャンのキャラクターが乗ったイメージです。主役はやはりカリニャン。少量限定ワインです。

熟した葡萄を丁寧に手摘みし、完熟した葡萄だけを使います。20~30日間の長い醸し作業でゆっくりと色と味わい香り、エキス分を引き出していきます。その後フレンチオークの新樽でゆっくりと熟成させ調和を取っていきます。使われる樽にもこだわりがるようです。さらにセラーのどこで寝かせるかも大事だとか。光量も温度、湿度も一定に保たれたモダンなセラーでゆっくりと熟成させていきます。

カリニャンのスパイシーな香り。黒オリーブ、カカオなどの香り。新樽に由来するバニラやオークの香りもあります。濃い目の色合いはキラキラと輝きがあります。樽熟でこなれて角が取れた感じが外観からも見て取れます。濃い目の味わいではありますがキャラクターがはっきりと感じ取れる繊細な飲み口。どうすればこうなるかと思うほどシルキーで柔かな口当たりは感動さえ覚えます。穏やかながらカリニャンからくる優しい酸味が全体を引き締めトータルバランスを優れたものにしています。アルコール分も高く粘性、コシも十分にあるのですがそれを感じさせない見事なバランス感です。私感ですがこの地の赤ワインでも完成度が抜群に高いと思います。

パトリックさんの言うように「沈黙」して飲みたいのですが美味しすぎて無理ですね!繊細で芯の旨味のある料理と合わせたいですね。鴨胸肉のロースト、じっくりローストして肉汁を落ち着かせて身のまわりにエピス(各種ハーブのパウダーなど)を塗り、カマルグの塩、オリーブオイルをかけて旨味同士をぶつけても面白いと思います。チーズであれば上質なシェーブルにオリーブオイルをかけてエスプレッソの粉を少し振りかけると相性がよろしいかと思います。


ガラパゴス

 価値観は人それぞれ違う。時代によっても違ってくるはず。私は昔、無知でどうしょうもない上司に的はずれな事を散々言われて嫌気がさした事があったな〜という事を思い出した。 こういった人の根本的な原因は何なのかなと考えた結果、情報がアップデートされてないんだろうなと思った。昔から持って...