2018年5月23日水曜日

Esprits neutres

ワインとは関係ない内容ですが実は私のワイン選びと深い関わりがあったりします。

「旨いものは一人で食す」これは私の鉄則であるわけです。何も独り占めしようという了見の狭い話ではありません。初めて訪れる店や初めて食べるもの、飲むものは全て「一人で食す」ということです。

本当に味わいたいと思ったら余計な詮索や人との会話は邪魔以外なにものでもありません。とかく最近は情報過多な世の中、無駄な情報が溢れています。人には機械にはとうてい及ばない優れたセンサーが備わっています。余計な情報や無駄な知識は時にそのセンサー機能を阻害します。持っているのに使えなくする訳です。

私は自分の持ってるセンサーを最大限使ってワインを選んでいます。買い付けに行く際はなるべく余計な情報を入れずニュートラルな状態でワイン選びに臨んでいます。

前置きが長くなりましたが、気になるお店がありました。お蕎麦屋さんです。もともと蕎麦好きであることもありそのお店に行ってきました。たまたま歩いていて看板が目に止まり場所を確かめて店の佇まいを見て、あらためて来てみようと思っていました。

ゆっくりと味わいたかったのでお昼でも遅めの13時半に伺いました。狙いどうりピークが過ぎていて他には一人のお客さんしかいませんでした。

初めて行く店ではシンプルなメニューが一番いいので当然「せいろ」をと思って行ったのですが店内に入った途端、天ぷらを揚げるごま油の香ばしい香りにやられました。席に付いてメニューを見ますが頭の中に「天ぷら」がくっきりと浮かび上がってきます。

メニューはきれいに手書きで書いてあります。メニューは「お品書き」であり何が食べられるのかを理解するツールです。しかしこちらの捕らえようによっては店主が何を食べてもらいたいかを読み解く暗号でもあるわけです。ここは集中して解読したいところです。

メニューを開き全体を見てみる。シンプルだけど店主の厳選感があります。多分10年前、5年前とは違ってきたのでしょう。色々やって厳選し削り込みこのメニューに至った感が伝わってきます。それらは何年も試行錯誤しながら選ばれ残ったメニュー達なのでしょうね。それ故に一品一品の完成度が高いとゆうことでしょう。

さて選択です。よーく見ていると「穴子」の文字が入ったメニューがだけが3回出てくる!これは「食べさせたい」メニューと見た!すでに頭の中では天ぷらが渦巻いていたので即決定!問題は蕎麦の種類だな。

10割のせいろ、これは王道であり外せない。もう一度メニューを観察すると挽きぐるみ「田舎せいろ」の文字。しかもサブタイトル「限定」これも惹かれる。蕎麦つゆとの相性やつゆの味をみるには「せいろ」が最高だが蕎麦の味的には「田舎せいろ」が食べたい!

これは迷う!うわ〜どっちも食べたいけどそんなメニューは無い!カウンターで一人悶ながら悩んでいると天使が現れた。ふと目に入った卓上メニューに「せいろ、田舎せいろ合盛りできます」の文字!神様〜〜ありがとうございます〜〜〜!

ということで「穴子天、合わせ盛りせいろ」に決定!食べたい物がたのめて嬉しかったのでビールもお願いします。

いい蕎麦屋さんはいい飲み屋さんでもあるわけです。ごま油の香ばしい香りで食欲がそそられます。まずはこの香りでビールを一口!この雰囲気の中で飲むと何故が嬉しさが湧き上がってきます。穴子天が上がる音を聞きながら飲んで待ってる時間は最高!思わず「あ〜」って言ってしまいます。

そうこうしているうちに目の前にはそば猪口、つゆ、わさび、天つゆ、塩などが並びます。そこに満を持して穴子天がやってまいりました。ごま油の香りが3倍増しに!幸せな香りに包まれます。なるほどな、穴子がバリバリに立った衣に包まれてすごい存在感を醸し出しています。一本丸で上げているので皿には2つに切って盛り付けられてきます。切り口から穴子の純白で、ふわふわした身が覗きます。脇には蓮根、茄子、ししとうが花を添えています。「せいろはお声がけ下さい」との店主の配慮も嬉しいですね。

それではお言葉に甘えて穴子天で一杯いかせていただきます。まずは何も付けずに食す。入店時から頭の中に浮き上がっていたものが今目の前に。香ばしい香りと共に期待通りのふわふわの穴子の旨味が口の中に広がります。カリッと上がった衣と穴子の柔らかさのコントラストが見事なハーモニーを描きます。これは旨い!結構なボリュームですがさらりと食べれます。

揚げたての極上穴子天を楽しんだ後、そろそろ「せいろ」をとお願いしました。待つこと3分「まずは10割せいろからどうぞ」と合盛りとはいえ別々に出してくれるんですね。ここにも店主の意図が見え隠れします。遅れる事3分、ちょうど「10割」を半分位食べた頃「田舎せいろ」登場です。挽きぐるみのため当たり前ですが色が濃いです。しかも細切りです。これは珍しいですね。

綺麗に盛られた「田舎せいろ」は艶々(つやつや)していて細く美しい佇まい。以前食した出来たての蒟蒻の刺し身のようです。つゆを付けずに食べてみます。そばの風味がいいですね〜!しかしこの細切りは初めての食感です。挽きぐるみの蕎麦は力強さやワイルドな風味と味わいが魅力ですが、ここの田舎せいろはそれにプラスして洗練された食感、食べやすさがあります。喉を通ったあとは強い風味がありますがマイルドに抑えられています。これはオリジナル感高いですね。10割もパンチというよりは洗練されている印象です。

田舎せいろを一口また一口と食べるうちにその味わいと洗練された構成にどんどん惹かれていきます。これは「10割」と逆に出されてたら「10割」のイメージは半減以下になっていたでしょうね。そのための時間差別盛りだったように思います。(真相は知りません)私のイメージとして店主の話し方、声、仕事をしているときの所作などを見る限りそばの味わいとマッチします。こおゆう寡黙で繊細な仕事ができるひとは良いものを作るんですね。本当に良いお店(人)でした。

たまたま歩いて看板見つけて訪問しましたが看板一つにも何か感じるものが出ていたのでしょうね。ワインと同じようにお店も自分で感じ開拓することは楽しいことです。皆様も是非町をぶらついて直感を信じて良いお店を開拓してみて下さい。スマホばっかりいじってたら無理だと思いますが...

ちなみにお店の名前も写真を上げる(だいたい撮ってないし)なんて無粋なことはしません。あしからず!

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